はじめに:開発環境が、ただのツールから「AIの相棒」になる日
GitHub CopilotやAmazon Q Developerの登場により、AIがコーディングを補助するのは当たり前の時代になりました。しかし、これらのツールの多くは、既存のIDE(統合開発環境)に「プラグイン」として後から追加するものでした。
もし、IDEそのものが最初からAIと深く統合され、あなたの思考を先読みし、開発の全工程をサポートしてくれる『AIの相棒』だとしたら、開発体験はどう変わるでしょうか?
2025年7月、AWSがプレビュー版を発表した「Kiro」は、まさにその未来を実現する、まったく新しいコンセプトのAI IDEです。この記事では、Kiroとは一体何なのか、その革新的な機能、そして今日からあなたのPCで使い始めるための具体的な手順を、分かりやすく解説します。
AWS Kiroとは? 3つのキーワードで理解する
Kiroは、VS Codeのオープンソース版である「Code OSS」をベースに構築されており、これまでの開発経験を活かしつつ、AIによる強力な支援を受けられるのが特徴です。その核心的なコンセプトは、以下の3つのキーワードで理解できます。
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仕様駆動開発 (Specification-Driven Development)
「製品レビュー機能を追加して」といった自然言語の仕様をKiroに与えるだけで、AIが技術設計、データフロー図、APIエンドポイント、そして実際のコードまでを自動で生成します。コーディングだけでなく、開発の「計画・設計」段階からAIが深く関与するのが最大の特徴です。 -
AIエージェント連携
Kiroは、単にコードを補完するだけではありません。ファイル保存時に自動でテストを実行したり、ドキュメントを更新したりする「インテリジェントフック」や、AIが自律的にコードを修正する「オートパイロットモード」など、まるで自律的に動くAIエージェントと共に開発を進めるような体験を提供します。 -
VS Codeとの高い互換性
Code OSSベースであるため、既存のVS Codeの設定や拡張機能(Open VSX互換のもの)の多くを引き継ぐことが可能です。開発者は、慣れ親しんだ環境を捨て去ることなく、AIの恩恵を最大限に享受できます。
情報源: Kiroのこれらの基本コンセプトは、AWSによる公式発表および、Impress Watchの記事で詳しく報じられています。
Kiro セットアップガイド
現在、Kiroはプレビュー版として、Mac、Windows、Linux向けに無料で公開されています。早速インストールしてみましょう。
Step 1: ダウンロード
まず、以下の公式サイトにアクセスし、お使いのOSに合わせたインストーラーをダウンロードします。
Step 2: インストール
ダウンロードしたインストーラーを実行し、画面の指示に従ってインストールを進めます。基本的には数クリックで完了します。
Step 3: 初回起動とAWSアカウント連携
インストール後、Kiroを初めて起動すると、AWSアカウントとの連携を求められます。これは、KiroがAmazon BedrockなどのAWSサービスと連携してAI機能を提供するためです。
- プロンプトに従い、「AWS Builder ID」または「IAM Identity Center」でサインインします。
- 認証が完了すると、Kiroが使用可能になります。
主要機能ツアー(First Look)
セットアップが完了したら、Kiroの主要な機能を少しだけ覗いてみましょう。
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UI(ユーザーインターフェース)
VS Codeを使ったことがある方なら、ほとんど迷うことなく操作できるでしょう。左側のアクティビティバー、中央のエディタ、下部のターミナルといった基本的なレイアウトは同じです。大きな違いは、AIとの対話を行うための専用チャットパネルが統合されている点です。 -
仕様駆動開発の体験
- 新しい空のフォルダを開きます。
- AIチャットパネルに、こう入力してみましょう。
「Node.jsとExpressで、シンプルなTODOリストを管理するAPIを作成してください。タスクの追加、取得、削除ができるようにしてください。」
- Kiroは、この仕様を基に必要なファイル(
package.json
,index.js
,routes/tasks.js
など)の構成を提案し、数クリックでプロジェクトの雛形を自動生成します。
さらに詳しく知りたい方へ
この記事では、Kiroの魅力のほんの一部をご紹介しました。NeumannLab.onlineでは、今後さらにKiroを深掘りしていく予定です。
- 現在の開発環境から乗り換えるべきか迷っている方へ
近日公開予定:AWS Kiro vs VS Code徹底比較!5つのポイントで判断する乗り換えガイド
- Kiroの最も強力な機能を使いこなしたい方へ
近日公開予定:「仕様書からコードへ」Kiroの仕様駆動開発(Specification-Driven Development)実践ガイド
- 既存のAWS開発ワークフローを改善したい方へ
近日公開予定:AWS Kiroによる開発ワークフロー革命:CodeCatalyst, Bedrockとの連携で実現するフルサイクル開発
まとめ
AWS Kiroは、単なる「AI機能付きエディタ」ではありません。それは、開発の進め方そのものを、より創造的で効率的なものへと変革する可能性を秘めた、次世代の統合開発環境です。
まだプレビュー版であり、今後の進化から目が離せませんが、そのポテンシャルは計り知れません。ぜひこの記事を参考に、あなたもKiroをインストールし、未来の開発体験の第一歩を踏み出してみてください。
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