AWS Compute Optimizer EC2サポート進化の全貌:137種のインスタンス追加で実現する継続的コスト最適化
はじめに:終わりなきクラウド最適化の旅へ
クラウド環境におけるリソースの適正化(Rightsizing)は、コスト削減とパフォーマンス向上の両面で非常に重要です。AWSは常に新しいサービスやインスタンスタイプをリリースしており、それに合わせてリソース構成を見直す必要があります。この継続的な最適化プロセスを支援する重要なサービスが、機械学習を活用して最適なAWSリソース設定を推奨するAWS Compute Optimizerです。
近年、AWS Compute Optimizerは立て続けにサポート対象のEC2インスタンスタイプを大幅に拡大しました。最初に80種類、続いて57種類のインスタンスタイプが追加され、そのサポート範囲は合計で137種類以上も増加しています。
本記事では、この一連のアップデートの全貌を解説し、Compute Optimizerの継続的な進化が、クラウドコストの最適化とアプリケーションのパフォーマンス向上にどのような影響を与えるのかを深く掘り下げていきます。
1. Compute Optimizerサポート拡大の歴史
1.1. 第一弾:80種類のEC2インスタンスタイプ追加
最初の大きな波として、Compute Optimizerは新たに80種類のAmazon EC2インスタンスタイプをサポート対象に追加しました。これにより、Compute Optimizerが推奨事項を生成できるEC2インスタンスタイプの総数は779に拡大しました。
この追加には、以下のような当時最新世代のインスタンスタイプが含まれていました。
- コンピューティング最適化インスタンス: c7i-flex, c6id, c8g
- メモリ最適化インスタンス: r8g, x8g
- ストレージ最適化インスタンス: i4i
- GPUベースインスタンス: g5, g5g, g6, gr6, p4d, p4de, p5
これにより、汎用的なワークロードからAI/MLのような専門的なワークロードまで、より広い範囲で最適化の推奨が受けられるようになりました。
1.2. 第二弾:さらに57種類のEC2インスタンスタイプ追加
その直後、Compute Optimizerはさらに57種類のEC2インスタンスタイプをサポート対象に追加し、継続的な改善へのコミットメントを示しました。
新たに追加された主要なインスタンスタイプは以下の通りです。
- アクセラレーテッドコンピューティングインスタンス: P5e, P5en, G6e (GPU搭載)
- ストレージ最適化インスタンス: I7ie, I8g (大量ローカルI/O向け)
- コンピューティング最適化インスタンス: M8g (汎用ワークロード向け)
- ハイメモリインスタンス: U7i (超大容量メモリ向け)
- 新サイズ: C7i-flex, M7i-flex (既存ファミリーの柔軟なサイズ)
これらのインスタンスタイプは、それぞれ特定のユースケースに特化しており、最新のハードウェアと最適化された設計により、高い性能とコスト効率を実現しています。
2. なぜ継続的なインスタンスタイプのサポートが重要なのか?
2.1. AWSの絶え間ないイノベーションへの追随
AWSは顧客の多様なニーズに応えるため、常に新しいプロセッサ、メモリ技術、ネットワーク機能を備えたインスタンスタイプを開発しています。Compute Optimizerがこれらの新しい選択肢に迅速に対応することで、ユーザーは常に最新技術の恩恵を最大限に活用し、ワークロードのパフォーマンスを最大化できます。
2.2. ユーザーの複雑な選定プロセスの簡素化
新しいインスタンスタイプが登場するたびに、「自分のワークロードに最適なのはどれか?」という判断が必要になります。Compute Optimizerは、この複雑な選定プロセスを自動化し、機械学習に基づいて最適な推奨事項を提供することで、ユーザーの最適化ニーズに応え続けています。
3. 拡大されたサポートがもたらす具体的な最適化効果
今回の連続したアップデートにより、特に以下のような先進的なワークロードにおいて、より大きな最適化効果が期待できます。
- AI/MLワークロード: P5e, P5en, G6eなどの高性能GPUインスタンスのサポートにより、機械学習のトレーニングや推論の効率が向上し、コストを削減しながら高速な処理が可能になります。
- ビッグデータ分析: I7ie, I8gなどのストレージ最適化インスタンスは、HadoopやSparkなどのビッグデータ処理において、I/O性能を向上させ、分析時間を短縮します。
- ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC): 最新のコンピューティング最適化インスタンスは、HPCワークロードの計算効率を高め、シミュレーションや科学技術計算の時間を短縮します。
- インメモリデータベース: U7iのようなハイメモリインスタンスは、SAP HANAなどのインメモリデータベースや、大規模なデータセットをメモリ上で処理するアプリケーションのパフォーマンスを劇的に向上させます。
4. Compute Optimizerを最大限に活用するための戦略
4.1. 定期的な推奨事項の確認と適用
ワークロードの特性は時間とともに変化するため、リソースの最適化は一度行えば終わりではありません。AWSマネジメントコンソールのCompute Optimizerダッシュボードを定期的に確認し、新しい推奨事項を評価・適用することが重要です。
4.2. 自動化による継続的最適化の実現
推奨事項の適用を自動化することも有効です。AWS Systems Manager AutomationやLambda関数などを活用し、推奨事項に基づいてインスタンスタイプを変更したり、リソースを停止したりする自動化パイプラインを構築できます。
4.3. コスト管理ツールとの連携
AWS Cost ExplorerやAWS Budgetsなどのコスト管理ツールと連携し、Compute Optimizerによる最適化が実際にコスト削減に貢献しているかを可視化しましょう。これにより、最適化の効果を定量的に把握し、さらなる改善点を見つけることができます。
# 例: AWS CLIで月間10ドル以上の節約が見込まれる推奨事項のみを取得する概念
import subprocess
import json
def get_filtered_compute_optimizer_recommendations(resource_type="ec2", savings_threshold=10.0):
command = [
"aws", "compute-optimizer", "get-recommendation-summaries",
"--resource-type", resource_type.upper()
]
try:
result = subprocess.run(command, capture_output=True, text=True, check=True)
summaries = json.loads(result.stdout)
for summary in summaries['recommendationSummaries']:
# 月間推定節約額が閾値を超えるもののみ表示
if summary['savingsOpportunity']['estimatedMonthlySavings']['value'] > savings_threshold:
print(f"Resource Type: {summary['resourceType']}")
print(f" Savings Opportunity: {summary['savingsOpportunity']['estimatedMonthlySavings']['value']} {summary['savingsOpportunity']['estimatedMonthlySavings']['unit']}")
print("---")
except subprocess.CalledProcessError as e:
print(f"Error executing AWS CLI: {e.stderr}")
except json.JSONDecodeError:
print("Error decoding JSON response.")
# get_filtered_compute_optimizer_recommendations("ec2", 10.0)
まとめ:クラウド最適化は終わりのない旅
AWS Compute Optimizerが継続的に新しいEC2インスタンスタイプをサポートすることは、クラウド最適化が一度きりのイベントではなく、「終わりのない旅」であることを示しています。AWSのイノベーションに追随し、Compute Optimizerのようなツールを最大限に活用することで、企業は常に最適なリソース構成を維持し、クラウド費用を削減しながら、アプリケーションのパフォーマンスを最大化できます。
あなたのAWS環境でCompute Optimizerを有効にし、その推奨事項を積極的に活用することで、クラウド運用の効率とコスト効率を次のレベルへと引き上げましょう。継続的な最適化こそが、クラウドの真の価値を引き出す鍵です。

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